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参加団体インタビュー

公正な貿易で貧困が無くなる。そんな世界を目指して、たくさんの人が活動しています。
フェアトレード運動普及の最前線で活躍している方々からお話を聞いてきました。

第2回:120年以上続く老舗メーカーの挑戦

九鬼産業株式会社 商品開発課 原田千大さん

世の中に新しい商品を生み出せる商品開発部を希望し、現在は家庭用、業務用に関わらず広く開発業務に携わっています。
フェアトレードの生産者へ直接会って話を聞かせて頂いた者として日本の消費者の方々にフェアトレード商品を少しでも知って頂けるよう活動して行きたいと思います。

はじめに、九鬼産業がどのような企業なのかお聞かせください。

原田氏(以下、敬称略)弊社は創業120年以上の歴史ある会社です。もともと四日市周辺は製油業が盛んで、菜種の生産地でした。当初は菜種を搾っていたのですが、明治十九年、八代・九鬼紋七氏が「油を搾るなら最高の油をより良い技術で」ということから、日本で初めて連続圧搾機を輸入し、圧搾法による胡麻油の製造を始めました。品質とおいしさを第一に考えたその精神は120年以上たった今も受け継がれ、ごま業界で初めて品質と安全性の国際規格ISO22000やFSSC22000を取得するなど、老舗でありながら先進的なシステムを取り入れたごまの専門メーカーです。

120年以上続く九鬼産業のような老舗がフェアトレードを導入したきっかけは?

原田主に二つあります。一つ目は、生産者に対する透明性を高める目的です。ごまという作物のトレースをとろうとしますと、商社まではとれるのですが、その先の農家まではなかなか難しいのが現状です。小さな農家が少しずつ作ったものを組合が集め、商社に販売したものを仕入れているので、どのごまがどの農家で作られたものなのか、といった情報の管理には限界があります。最近になって社会で生産者の透明性に関して意識が高くなってきているのを感じます、弊社でもお客様に対し製品の透明性を示したいと思った事がきっかけですね。

二つ目は、フェアトレードが、プレミアム(※)という形で、生産者の農業のレベルアップに貢献出来る事に共感したことです。農作物を取り扱う上では、収穫量の不安定さといった問題は避けられません。天候の他に、生産者がもっと儲かる作物があったら乗り換えてしまう等、様々な要因があります。実際3年程前にごまの価格が高騰した時期もありまして、ごまを専門に扱う会社として生産者の方に支えられている部分が大きいと認識するようになりました。

※商品の代金とは別に、生産地域の社会発展のために支払われる資金。使途は生産者が民主的に決定する。

今回のフェアトレードのごまの特徴は何かありますか?

原田今回現地を訪問し、実際にごまの栽培を見させていただいたのですが、白ごまの中では最高品種といわれている胡麻を栽培しておりました。粒も大きいですし、味も弊社で食べてみたところ契約栽培のごまと遜色無いくらい、おいしいという評価でした。現地の農家もフェアトレードで出すごまは最も品質の良いものを出しているとおっしゃっていて、見た目も大きさも味もいいものを出していただいています。

ニカラグアの生産者(デルカンポ農協)を訪問されたそうですが。生産者の様子をお聞かせください。

原田フェアトレードごまの生産者であるデルカンポ農協は、ごまの栽培を50年位前からやっていたそうですが、フェアトレードに参加したのは10年ほど前だそうです。デルカンポ農協のマーケティング・営業担当をしているニコラスさんが、フェアトレードを導入しました。当時、ニカラグア産という胡麻のブランドが弱く、ニカラグア産としては全く売れなかったので、フェアトレードや有機栽培でニカラグアブランドを立ち上げて売るといった活動を始めたそうです。

フェアトレードや有機栽培を始めるにあたり、指導などもされたのでしょうか。

原田こちらの写真が(写真1)デルカンポ農協という生産者組織です。そして、このデルカンポが農家に胡麻栽培のマニュアルを配っているんですよ。ごまの種をまくタイミングや育つまでの肥料のやり方や収穫の方法などが書かれています。これもフェアトレードを始めたときからやっているのではないかと思います。また生産者一つ一つに生産を記録する冊子も配っており、後で記録を確認する事ができます(写真2)。

写真1 デルカンポ農協の事務所

写真2 胡麻栽培のマニュアルと栽培記録冊子

フェアトレードに参加することによって生産者の生活には何か変化があったのでしょうか?

写真3 プレミアムによって購入された浄水タンク

原田プレミアムによって、生活は豊かになっていると思います。電気が通ったのが2年前だそうですし、以前は上水道がひかれておらず飲み水も十分に確保できない所もあったようです。現在は、浄水タンクを設置したことで暮らしも豊かになってきていますし、農業に使う設備も徐々によくなってきております。

プレミアムはどのような用途に使われているのでしょうか?

原田弊社のプレミアムは、浄水タンク等の購入費に使われたそうです(写真3)。他からのプレミアムは、昔小屋だった所の建屋を新しくしたり、飲み水用の井戸を作ったり、農家の女性が民芸品を作るために教育を施すために使われているそうです(写真4)。

写真4 その他のプレミアムの使途

実際に生産者を訪問し、フェアトレードに対する考え方で変わった事はありますか?

原田ニカラグアに行く前まで、フェアトレードという考え方については文章で読んだだけで、漠然とした印象を抱いておりました。プレミアムという言葉にもなじみがないですし、「社会貢献に対してお金を払う」といった、「国際協力に興味のある人」だけがフェアトレード製品を買うのかなという感覚でした。

しかし、現地に行ってみて、フェアトレードの胡麻に関しては、本当に質のいいものを提供していただいている事がわかりました。

また、私たちが原料を買うという意味では、生産者からすると私たちはお客さんであり、立場が上下というイメージがあったのですが、その考え方も変わりました。ニコラスさんも、「良い関係で長く取引できるよう農家から商社、メーカー、消費者まではみな対等な立場という考えでいてほしい」とおっしゃっていました。ニカラグア自体が元々社会主義の国(今は資本主義です)で、国民性も社会主義なんですよ。組織を見ていても、均等に、平等にと言う考え方がベースとしてあるのです。「みんな同じ立場でいいものを作って、その利益をちょっとずつ分配して、皆で幸せになりましょう」って言うのがフェアトレードの考え方で、それはまさに社会主義の考え方ですよね。

ニコラスさんは更に「フェアトレード商品に関してはあまり資本主義的な考え方を持ち込まないでほしい」ともおっしゃいました。例えば、別の国でフェアトレード原料を作っている組織があって、その組織の方が安いから乗り換えるなんて言われたら、フェアトレードという考え方は成り立たなくなってしまうと。難しい事ではありますが、フェアトレードに関してはその考え方で続けていかないと続かないのではないかと思います。そのかわり、すごく透明性が高いというか、生産者側の情報に関しては何でも見せてくれるんですよ。日本だったら普通では見せて頂けないような工場の中なども、現地では何でも公開してくださるんです。「我々は九鬼産業を信頼するので、何でも撮っていってください」と言ってくださいました。

フェアトレードに対してリアリティが感じられないというのは、消費者も同じだと思います。それに対して、どのような働きかけが必要だと思いますか。

原田消費者が実際に生産者に会いにいくのは無理なので、写真や動画を使って、農家の方々の状況を提供したり、フェアトレード自体の考え方を理解していただく事が大事だと思います。ですので、今後消費者に対して、弊社のホームページでも写真等を使って、フェアトレードの情報を積極的に発信していこうと考えています。

フェアトレード商品を取り扱う事で、どのような影響を期待されていますか? また、消費者に一言お願いします。

原田フェアトレードに参加する事によって、消費者により透明性の高い安全・安心な商品をお届けできる事、また弊社が生産者の栽培技術や安定性の向上に貢献できる事を期待しています。結果的に、日本において今後もっと市場が広がっていけばいいなと思います。フェアトレードの製品というと、チャリティー的な意味合いで捉えている方も多いとは思いますが、弊社としては、より良い品質のものを皆様にお届けしたいという想いで商品を提供しています。ぜひ、一度お試しください!

あとがき

第二回は老舗の胡麻メーカー九鬼産業様でした。チャリティー的な意味合いではなく、「より良い品質のもの」を提供したいから厳しい基準とプレミアムによって生産者の技術力向上に繋がるフェアトレードを取り入れるという考えはとても新鮮でした。このような考え方が浸透すればフェアトレードはより広がっていくのではないでしょうか。また実際の生産地の写真やお話をたくさん聞く事ができてとても楽しい時間でした。原田さん、ありがとうございました!

インタビュアー 芦葉・大井