アジア最大のスペシャルティコーヒーイベントSCAJ2024でセミナー講演をするために来日された際に、インタビューをして頂きました。コーヒーのスペシャリスト、パウロさんに今生産者の抱える課題や、消費国の現状をご紹介いただきました。
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インタビュー日時:2024年10月11日
インタビュアー:フェアトレード・ラベル・ジャパン
米田すずらん(学生インターン・(取材当時)横浜国立大学大学院 修士1年)
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Q1. コーヒー生産者が抱える課題はどのようなものがありますか?
生産地では多くの課題を抱えています。中でも気候変動の影響は大きく、気候が予測しにくくなることにより、栽培計画が立てづらくなっています。また、深刻な干ばつが起きており、水不足が深刻です。農業用水だけでなく、生活用水の確保も危うくなっています。他にも、コーヒーの栽培において寒暖差が要となりますが、温暖化の影響で収穫量が減少しており、実家の農家では2022年の収穫予測100袋のところ60袋、2024年には150袋の予定が、80袋しか取れませんでした。
他にも、国際市場におけるコーヒー豆価格の変動が激しく、生産者の収入が不安定になっています。生産性をあげたい一方で価格の変動によっては、ロスが生まれることもあり生産量の調整が難しく、また他方では取引価格が最低価格に満たないこともあります。
©Santiago Engelhardt
Q2. フェアトレードの取り組みの中で、よりサステナブルな農法を導入することもありますが、生産地域の方々はそれをどのように捉えていますか?
ラテンアメリカにおけるコーヒー生産の歴史は300年と長く、文化の一部であるからこそ新農法を採用する際はやはり慎重になります。例えばブラジルにある実家の農家でオーガニック農法を取り入れた時は、周りから心配されていました。他の農家にとって従来の肥料を使わないことはあり得ず、コーヒーの質を落としてしまうのではないかと考えられていたからです。しかし一度始めれば、環境へもコーヒーの質へも良い結果が出てきて、関心を持たれるようになりました。やはり300年間同様の栽培方法を受け継いできているので、コーヒーの質や生産性について不安になってしまう方もいます。しかし、これまで続けてきた農法では持続可能な生産ができないと実感する生産者も多く、新農法を取り入れることへの重要性を感じ、またより良いコーヒーを作れることも認識し、近年では多くの生産者が新農法の導入に前向きです。生産者もコーヒーを生産すると同時に、肥料などを使用するという意味では消費者でもあります。生産者としても持続可能な消費を考えていかなければなりません。
Golden Cupでコーヒーをカッピングするパウロさん ©CLAC
Q3. パウロさんから見た消費国における現状や国による違いを教えてください。
これまで、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アメリカを含む27カ国を訪問してきましたが、国による違いは様々あります。多くの消費国は価格競争が激しく、高品質なコーヒーであっても、低価格のコーヒーが優先される傾向にあります。サステナビリティという概念や重要性への理解が進んでいるからといって、サステナビリティに投資したいという意思が伴っているとは限りません。一方、近年、日本のコーヒー消費者は、単にコーヒーを飲むだけでなく、その背景にあるストーリーや生産者の顔が見えるようなコーヒーを求める傾向が強まっていると感じます。
©Fairtrade Sweden
Q4. パウロさんの腕にあるコーヒーのタトゥーにはどのような意味が込められているのですか?
このタトゥーは、自分自身を表しています。生まれてから常にコーヒーと共に人生を辿ってきました。コーヒーは私の一部であり、コーヒーの持続可能性を守ることは私の使命でもあるのです。カップからコーヒーの木が伸びている絵は、生産者とコーヒーを飲む消費者の方々を繋ぐ私自身を表しています。
フェアトレードのコーヒーを選ぶことは、生産者の生活向上と生産地域の環境保護に繋がります。
日本で購入できるフェアトレードコーヒーは、フェアトレード・ジャパンのウェブサイトにてご紹介しています。ぜひチェックしてください!
パウロさんについては、FRaUとimperfectが共同で運用するwebサイトDo well by doing good.でも特集記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください。