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今回は家族経営で、フェアトレードに積極的に参加されているリタトレーディングの大村千晴さんと大村有人さんにお話しを伺いました。
大村千晴さん
オーガニック紅茶の輸入を始めたことが、フェアトレードの事業を始めたきっかけです。フェアトレードは世界的な規模で、お互いに協力し あい、助け合っていこうという精神であると思います。全世界にこの思いを拡げて、生きやすい社会をつくるために皆様とともに活動の輪を拡げられるように取り組んでいきたいと思っております。
大村有人さん
静岡県生まれの横浜育ち。実務全般に携わっています。フェアトレードの仕事に関わってから、海外の生産者だけでなく、日本国内でも、 様々なご縁を頂く機会が増え、充実した日々を過ごしています。次の世代を担う子供たちがいきいきと暮らせていける持続可能な社会を目指し て、今後も継続的に取り組んでいきたいと思っています。
御社の創業の経緯をお聞かせください。
大村氏(以下、敬称略)私が小中学生だった当時、食に気を使っていた母は、子どもの健康を考え添加物を使用しないお弁当を持たせました。真っ赤なウインナーのような、周りの同級生と同じような色をしたお弁当は持たせてもらえなかったため、学校では恥ずかしい思いをしたことを思い出します。
小学生のときから、食の問題に興味をもち、母に付き添い大人に交じって自然農法、自然食等の勉強会に参加していました。そうした背景もあり、心と体の健康に良いもの、本当に美味しいものを提供していきたいと思い2007年に家族とともに会社をたちあげました。
御社の活動理念についてお聞かせください。
大村 「リタトレーディング」の「リタ」は、自利利他という言葉に由来しています。この言葉は、自分の利益と他人の利益を両立させるという意味です。社会にもっと役に立てるようになりたいという想いが根底にあったのですが、自分たちが成長しながら社会に利益を還元出来るような事業をしたいと思っています。
地域コミュニティ発展のための取り組みをしている茶園や、循環型の農法などに取り組んでいる茶園を自社の調達先として選択する事で、自分たちに出来る身近なことから社会貢献ができたらと思っています。
紅茶を取り扱おうと思われたのは何故ですか?
大村 昭和初期に祖父がジャワ島で貿易の仕事をしていたのですが、そのときの話を、子どものころより何度も聞いていたので、以前からアジアの国々や貿易に興味がありました。今の時代に合った貿易のあり方として、フェアトレードに興味を持っていました。横浜で開催されたフェアトレードに関する勉強会等に参加したり、実際の貿易実務に関して、商社の方に指導を頂いていました。このような活動の中で、スリランカ人から紅茶やスパイスの魅力についてお話を伺う機会があり、その後、茶園を紹介して頂きました。現地にも行って詳しくお話を伺い、紅茶を持ち帰りました。それが事業の始まりです。
フェアトレードの認証を取得しようと思ったのは何故でしょうか。
大村私たちは当初、オーガニックの紅茶を取り扱いたいと考えていましたが、なかなかいい茶葉に出会う事が出来ませんでした。農薬を使っていない製品を取り扱っていましたが、お取引先から認証のマークが無いと店頭では販売しにくいと言われました。フェアトレードについても、認証マークをつけて欲しいという要望もあり、その後、オーガニック認証とともに、フェアトレード認証も得ている茶園との取引をはじめました。
フェアトレードの認証を取得するメリットは何だと考えておられますか。
大村 日本の場合、流通経路が複雑なので、第三者が「フェアトレード」を証明する、という事が製品の信頼性を示すために有意義なことだと感じています。消費者にとっても分かりやすい、ということも大きな利点だと思います。フェアトレード製品が仮にスーパーの棚に並んでいても、一目で分かりますし、製品の特徴をお客様にお伝えしやすくなると思います。
製品の名前やパッケージにも相当こだわりがあるようですね。
大村 弊社の主力製品であるミトラシリーズの「ミトラ」はサンスクリット語で「友情」という意味です。ロゴは、インドやスリランカの文化に詳しく、また、絵が得意な日本人の知人にお願いしました。鳥をモチーフに、助け合う精神、共存共栄の精神を表す鳥が二羽向かい合っているマークを作って頂きました。パッケージも、ヨーロッパ的な色合いを用いずに、アジア系の色を用いるようにしました。紅茶は、イギリスやフランスのブランドが中心で、ヨーロッパのものというイメージを多くの人がもたれていると思いますが、私たちはアジアのテイストを大事にして日本に広げていきたいと思っています。そもそも紅茶は、ヨーロッパで取れるものではありません。実際に紅茶を作っているのは、アジアです。スリランカやインドなどのアジアで生産されているという事を消費者にも意識していただきたいと思い、このようなパッケージにしました。
フェアトレード認証製品を扱ってみて、消費者の反応はどうですか?
大村 ご年配の方はまだフェアトレードを知らない方が多いのですが、2、3年前に比べると、明らかにフェアトレードを知っている人は増えてきたと感じています。今年のバレンタインでは横浜市内の百貨店で、紅茶とチョコレートの試飲販売会を実施したのですが、小・中学生くらいのお子さんが親を引き止めて、「お母さん、このフェアトレード製品を買わなきゃダメだよ」って言ってくれたんですね。そして買っていただきました。若い世代で特にフェアトレードが浸透してきている事を実感しました。
そう、紅茶に加えて、昨年から御社ブランドのチョコレートの販売を始められましたよね。お客様の反応はいかがでしょうか?
大村 ビターテイストで紅茶とも相性が良いのですが、オレンジは特に評判がいいですね。甘すぎず、味も濃厚、オーガニックカカオを使用しており、プチギフトとしてもご愛用頂くなどお陰様で好評でした。
フェアトレードを広めるために、地域のコミュニティでも積極的に活動されているとか。
大村 横浜市内の大学の生協で設けられたフェアトレードコーナーに協力いたしました。これは、学生さんが企画したのですが、かなり好評だったようです。その他、地域での活動として、紅茶を通じて、楽しく、豊かな日常生活を過ごせたらと思い紅茶教室やティーパーティーを企画しています。前回のティーパーティーでは、ミニ演奏会と共にフェアトレード紅茶を紹介したのですが、横浜市在住のお客様を中心に50名ほど参加して頂き、地元のメディアにも取り上げていただきました。
今年の夏からは、横浜市中央図書館で行われるライブラリーカフェのドリンクコーナーにフェアトレード紅茶等を提供させて頂いています。私たちは、地元である横浜という街にこだわっていきたいと思っています。横浜市は環境への取り組みにも意欲的で、ヨコハマ・エコ・スクール(YES)等、市民・市民活動団体・事業者・大学等による環境啓発講座やイベントも数多く実施しています。そういった場で、フェアトレードの紹介をしていきたいです。フェアトレードを地域、街づくりに絡めながら普及啓発活動を推進していけたら良いと思います。
では、最後に消費者に対して一言お願いします。
大村 私たちは「友情の紅茶」を広めたいと思っています。生産者の方々、環境に対して、また家族の方と、紅茶を通じて心が通じ合うようなかけがえのない時間を楽しんで頂きたいと考えています。
昔は家族に「お茶の時間」というものが存在していたのですが、今では急須さえも置かない家庭もあって残念に感じています。お茶を入れてお菓子を出して、語らう場があるというのが、日本の良さだったのですが、ペットボトル飲料が主流になってしまいました。そんな時代でも、いつも時間に追われて仕事をしているのではなく、「間」というものをもっと大事にして頂きたいと考えて事業を行っています。是非、たまには、ティーポットを使って、ゆっくりとお茶を淹れ、生産地にも思いを馳せながら、ティータイムを楽しんで頂けたらと思います。弊社の紅茶も、機会がありましたら、是非、一度お試しくださいませ。
第三回は、横浜発の家族経営企業リタトレーディング様でした。リタトレーディング様は、お茶会や学校との協同などの地域活動と、フェアトレードを結びつけており、フェアトレードがその地域に住む様々な人々を繋げていく、一つのきっかけになりうる事を感じました。本格的な紅茶の楽しみ方をお客様に提案し、同時に紅茶を作った人々への敬意も忘れない。そんなお二人の信念に触れる事ができました。大村さん、ありがとうございました!
インタビュアー 大井