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第06回 一般社団法人 わかちあいプロジェクト 日本における今後のフェアトレード
2013/05/18(土)
フェアトレード・ラベル・ジャパン(以下、FLJ)は、今年で20周年を迎えます。フェアトレード認証ラベル製品を日本に初めて導入したのは、キリスト教の牧師、松木 傑(マツキ スグル)さんです。日本国内のフェアトレードの普及を目指し、1993年当時、「トランスフェアジャパン(現在のFLJ)」を設立しました。
現在、松木さんは「一般社団法人 わかちあいプロジェクト」の代表を務めています。今回のインタビューでは、松木さんに、「日本における今後のフェアトレード」について、お話をうかがいました。
― トランスフェアジャパン(現在のFLJ)設立当初についてお聞かせください。
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松木氏(以下、敬称略):1993年11月にトランスフェアジャパン(FLJの前身)を設立しました。その後、イタリアやカナダでもフェアトレード・ラベル組織が立ち上がり、しばらくしてFLOが設立されました。フェアトレードがとても盛んなイギリスも、ほぼ同時期に組織が立ち上がりました。
日本でのフェアトレード認証ラベル製品は、わかちあいプロジェクトと第一コーヒー株式会社がコーヒーを1993年の春から売り始めたのが最初です。 しかし、日本ではなかなか広がりませんでした。 1993年11月の時点では、フェアトレード団体の中でもコーヒーを扱っているのは「第3世界ショップ」しかありませんでした。2002年からコーヒーチェーン店やコーヒー生豆の専門商社などでフェアトレードコーヒーの取り扱いが始まり、2003年になると少しずつ広がるようになってきました。
― 日本にとって、フェアトレード導入が早過ぎたということでしょうか?
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松木:早いとは思いません。世界の動きはフェアトレードに取り組む方向に向かっていますから、日本もそうなっています。日本でなかなか普及しないのは、一番の理由は「世界の課題とは何か?」という問題意識に欠けているためだと思います。世界の課題は、環境問題と貧困問題です。それが地球的な課題だということは、国連などの会議でいつも意識されています。そして貧困問題に対する具体的な取り組みのひとつがフェアトレードであると。でも、日本ではそういう大きな枠組みで理解しようとしていないと思います。フェアトレードは、貧困問題に市民レベルで取り組める具体的な方法です。フェアトレードに取り組むための理解と理念が必要です。
以前、イギリスでフェアトレード・タウン宣言をして、実際にフェアトレードに取り組んでいる自治体に伺ったことがあります。そこの役所の方から、自治体がフェアトレードに取り組む理由は、アジェンダ21(1992年6月の地球サミットで採択される)だと、説明を受けました。つまり、世界の環境問題や貧困問題の解決に取り組むと国連で決めたことは、国においても、自治体においても、自分たちの課題として理解されています。ちゃんとフェアトレードに取り組むための論理が成り立っています。
日本にはフェアトレードはみんなでやるべき課題なのだという共通の認識が未だ育っていないと感じます。私は「リンゴ」、あなたは「みかん」が好き、というのをこえた、「共通の課題」という意識がない。今、環境問題は、そうなりつつあります。好き嫌いではなく、「みんながやること」として受けとめ始めています。おそらく、イギリスでフェアトレードが盛んなのは、そういう意識があるからだと思います。好きとか嫌いというレベルだったら広がりようがない。そうした広報や教育が日本では未だ不十分だと思っています。
また、広報のためには、いろんな形でやらないと意識は広がらないと思います。日本では企業の取り組みも直ぐに大きな売り上げにつながらない。そういう意味だと、僕は大手企業があきらめずにフェアトレードを続けているのは立派だと思います。普通の商売でいえば、売れなかったらすぐ棚から外してしまいそうな物でも、少なくとも彼らは理念に従って、あまり売れなくても続けようとしていますから。
― やはり、広報や教育が重要ということですね。
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松木:そう思います。国や自治体がやれとか、そういうことではなく、市民的にやっていく方が良いとは思いますが、ヨーロッパでは、各国のフェアトレード認証ラベルの推進組織の意義を行政がきちんと認めて資金的な援助をしている。それによって市民レベルでのフェアトレードの広報や教育が可能になっている。フェアトレードがグローバルな課題解決につながっているという認識を持てば、行政がそういうところをもう少しバックアップするのは自然であるし、おそらく、そうなっていくのではないだろうか。つまり世界の課題であるかぎり、フェアトレードがなくなることはないのです。日本でなかなかうまく普及しないというイライラは今もあるけれど、でも世界の課題があるかぎり、フェアトレードは広がっていくのが必然です。だから焦る必要はないとも思っています。
― いつ日本にフェアトレードが完全に定着するとお考えですか?
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松木:まだ時間がかかると思う。僕の印象だと、イギリスなんか新しいフェアトレード商品が出るとみんな飛びついて買う。たとえば、フェアトレードのゴールドが始まったら、何十社がパッと参入してくる。それは、おそらく彼らも理念というよりもやはり、売れるからやる面があると思います。やっぱり売れる・売れないが商売の重要な基準だから。新しいことをやれば、消費者が支持してくれる。僕たちは力がないにもかかわらず、新しいフェアトレード商品を出しているでしょ。僕たちがいろいろなことをやっても、わかちあいプロジェクトそのものが知られていないせいもあり、フェアトレードも知られていないせいもあり、やったから売れるとはなっていないから。そういう意味だとまだまだ定着したとは言えないです。
― わかちあいプロジェクトは、新たなフェアトレード認証製品の商品化をとても積極的にやられています。そのアイデアの根本や発想はどこから生まれるのでしょう?
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松木:新しいことをやりたいという思いがあるからです。情報はFLOのネットワークやホームページを見ていろんなところを調べれば、どこにどうコンタクトすれば具体的に進められるかがわかる。売れる・売れないよりも、他人がやっていない新しいことをやりたいというのは、単純に僕の欲望かもしれない。でも企業がやれないような新しい商品を提案していくのがわかちあいプロジェクトの役割だと考えている。今新しくやっているのはキャンドル。はちみつは、すでにフェアトレード商品になっている。だから同じくミツバチの巣から採れる蜜蝋を使って何かできるのではないかと思いついて・・・。 FLOの担当者に問い合わせたり、かなりいっぱい探して、ようやくアルゼンチンの生産者に出会った。将来的に、もし、蜜蝋のフェアトレード商品が世界で広まっていけば、僕の思いつきがきっかけと言えるのではないかな。(笑) いま、新しい商品としてフェアトレードの蜜蝋クレヨンを製造中です。
サッカーボールにフェアトレード基準を作ることも、実は僕が提案したことがきっかけ。…アフリカの難民の子供たちに、サッカーボールを寄付するために、パキスタンのサッカーボールの会社を訪問したとき、「FIFAのマークのライセンス料が値上げされる」と会社の社長さんが、小言を言っていたのを聞いたのがきっかけです。
そこで、生産者のためのフェアトレードマークを付ければいいじゃないかと思い付いて提案した。そしてフェアトレードのボールが始まった。だから、なにか新しいアイデアが思い付いたら、形にしようと努力していけば実現できるところに面白さがあると思います。
― 松木さん、どうもありがとうございました。
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あとがき
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日本にフェアトレード認証製品を導入し、常に最前線を走ってきた松木さんからお話を聞けたことは、非常に貴重な体験でした。イギリスやスウェーデンなどヨーロッパ諸国では盛んなフェアトレードですが、日本では普及率がまだ十分とは決して言えません。それでも、貧困問題や環境問題が世界の取り組むアジェンダにあるかぎり、フェアトレードが広まっていくのは必然 という言葉に、とても重みを感じました。日本のフェアトレードはこれからです。
(インタビューと文責:FLJインターン生 早稲田大学 政治経済学部3年 石原 優作)
今回はフェアトレードがあらゆる場所で浸透している国、イギリスでフェアトレードの普及活動に取り組む組織:「フェアトレード・ファンデーション (Fairtrade Foundation)」 から来日したアダム・ガーデナー ( Adam Gardener) さんにお話をうかがいました。
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インタビュアー:
フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局
学生ボランティア:三村 拓海 (上智大学 国際教養学部 国際教養学科 3年)
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