フェアトレード・レポート

フェアトレード・レポート

エチオピア:オロミアコーヒー生産者組合連合

Oromina Coffee Farmer Cooperative Union(OCFCU)

設立年 1999年
国名 エチオピア
組合員数 102,395人(そのうち、約4割が
フェトレードコーヒーの生産に携わっています)
推定年間生産量推定年間生産量 30,500トン
取扱品種 Yirgacheffe, Sidamo, Limu, Jimma, Harrar, Nekemte
標高 2,300メートル
収穫月 10月〜1月
オーガニックの割合 100%

現在、OCFCUはエチオピアで最も大きいコーヒー生産者組合です。OCFCUは1999年、生産するコーヒーを直接”Specialty Market”へ輸出する目的で小さな生産者組合が統合する事により設立されました。OCFCUがFLOの認証を取得したのは2002年、今日ではアメリカ、欧州、オーストラリア、そしてアジア諸国へコーヒーを輸出しています。

OCFCUは、環境保護と社会的公正を推進する事を組織の理念として掲げ運営がなされています。その例として、組織の主要な地位に女性が就いている事、生産されるコーヒーのすべてが”Bird Friendly Condition”と呼ばれる有機栽培技術を用いて生産されている事が挙げられます。フェアトレードによって、OCFCUにもたらされた社会的インパクトには次のような事があります。

教育

OCFCUの組合メンバーは、フェアトレードプレミアムにより15の学校と42の新たな教室を建設しました。さらに4つの新しい学校が現在建設中です。

生産投資

OCFCUは組合メンバーを対象としたトレーニング開催に出資することで、持続可能な生産方法を組合メンバーに広めることに努めています。現在OCFCUのコーヒーは、森の中で、有機農法により、さらに”Bird Friendly゛な環境で栽培されています。
加えてOCFCUは、機組合メンバーが購入した水洗設備(Washing Station)の機器修理・保守のためのファンドを設立しました。さらに5つの組合に対しては、環境に配慮したコーヒー洗浄機器を購入するためのローンを提供しました。
この他にもOCFCUは、コーヒー農園に食用のシトラスやバナナを間作物として育てることを奨励し、生活を向上させるためのサポート体制を整えています。組合メンバーに蜂の巣を200個提供した事もあります。

環境

OCFCUは、コーヒーの副産物(コーヒー豆を洗浄および乾燥させる上で発生する廃棄対象となる果肉や皮)を堆肥として利用することや、シェードツリーや有機肥料を使用する事を促がすなどして、有機農法技術に関するトレーニングを組合メンバーへ提供しています。
Credit ProgramOCFCUは、2006年に設立したオロミア共同組合銀行(Cooperative bank of Oromia)の創設に関わった団体の一つであり、最大の株主でもあります。

保健

OCFCUにより4つの地方診療所が建設され運営されています。また56の浄水設備がコーヒー生産者コミュニティーへ提供されました。

交通の発展

地方に橋が建設されました。

グアテマラ:チョフスニルコーヒー生産者組合

Cooperativa Chojzunil

設立年 2000年ごろ
国名 グアテマラ
組合員数 約150人
推定年間生産量推定年間生産量 約120トン
標高 1,500-1,800メートル
収穫月 2月〜4月
オーガニックの割合 100%

チョフスニルコーヒー生産者組合は、グァテマラ北西部、ウエウエテナンゴ県の山奥にあるサンタエウラリア郡チョフスニル村にある農協です。中央アメリカ先住民の住むマヤ族のチョフスニル村では、村人約150家族が参加し、コーヒーの有機栽培に取り組んでいます。

村は標高1,500〜1,800mに位置し、昼夜の気温差が激しく、霧の多い気候はコーヒー栽培に最適な環境です。村では100年以上前からコーヒーが栽培されていましたが、十分な生産技術もなく、また僻地であったため、唯一の現金収入源のコーヒーも満足な価格で売ることができませんでした。フェアトレードに参加してからは、技術を学び、今では高品質の有機栽培コーヒーを作れるようになりました。年々品質も向上しています。

現在では主に日本、アメリカ、ドイツなどにフェアトレードで有機栽培コーヒーを輸出しています。フェアトレードで得た利益は、生産者の家の改修、家族の教育資金などに役立てられている他、中学校や診療所といった公共施設の建設をはじめとする地域の発展のためにも使われています。

インド:シュープール茶園

Sewpur Tea Estate

設立年 1900年
国名 インド
組合員数 331人
推定年間生産量推定年間生産量 462,004kg
取扱品種 Green
標高 225メートル
収穫月 3月〜11月
フェアトレード認証製品として販売している割合 12%
オーガニックの割合 100%

シュープール茶園は、アッサム地方の北部にあるDibrugarh地区に広がる平野にて茶を栽培しています。フェアトレードによってこの茶園および地域にもたらされた社会的、生産的な恩恵には下記があります。

教育

学校やリクリエーションのための建物が建設され、生徒達へ奨学金が提供されました。

生活の向上

労働者の家には庭ができ、Chulhasと呼ばれる燃料木材の消費を減らし、調理が容易できるクッキングストーブを購入する事ができるようになりました。フェアトレードプレミアムによって、蚊帳が労働者へ配布されました。

交通の発展

茶園周囲にある沢山の道路を整備しました。それらの道路は、茶葉生産に役立っただけではなく、茶園周辺に住む人々の生活に大きな利益をもたらしました。

女性支援プログラム

女性の経済的自立を促すため、フェアトレード・プレミアムによって機織り機2基が提供されました。

インド:エコ・ネクターとカールゴン地区生産者向上組合(コットン)

Eco Nectar & Khargone Krushak Utthan Samiti

「フェアトレードは私たちにより良い未来への希望を与えてくれました。」(コットン生産者、PEB会長 アルジュン・ビルマン氏)

はじめに

小規模生産者がフェアトレードの認証を受けるには、小規模生産者組合向けフェアトレード基準(包括的基準)を遵守する必要があります。基準では、生産者は各メンバーや地域の社会・経済発展に貢献できる正規の組合を組織化することが求められています。
しかし、この条件をまだ遵守できる段階ではない生産者でも、「契約栽培」の基準を満たしていれば認証を取得することができます。この場合、生産者は推進団体となる仲介組織(たいていは輸出業者やNGOなどがその役割を果たす)と契約を結ぶ必要があります。これらの仲介組織は、生産者たちが自分たちで組織を作り、うまく機能させていけるよう支援を行います。

背景と体制

エコ・ネクターは、有機認証を取得しているマンジートグループ系列の会社で、インドのコットン主要メーカーであり、コットン輸出業者でもあります。会社の主な活動は有機農業の推進と農民への有機栽培技術指導ですが、後進地域での経済的、社会的、そして教育の向上を推進しており、さまざまな形態で自家経営が行えるよう、女性に教育やトレーニングの機会を提供しています。

2007年3月、エコ・ネクターはKKUSを設立しました。組合員は有機生産の訓練を受けており、2008年にエコサートにより有機認証を受けました。カールゴン地区は、そのほとんどが中央インドのマドヤ・パラデシュの部族地域です。KKUSにはそのカールゴン地区サトプラ・ヒルの549人のコットン農家が所属しています。

組合員は26の部落からなる7つの村から集まり、さらに約15~20人のグループに分けられています。村々は辺ぴな丘陵地帯にあり、多くが森林地帯に近接しています。都市部からは遠く離れていて、近代設備はありません。道路状況もひどく、多くの農家は運搬のために4時間も歩いて登らなければなりません。そこは、以前は深い森林に覆われた山でしたが、今ではそのほとんどが破壊されています。そのため、農民たちは以前よりも森林破壊問題に目を向けるようになり、植樹活動を行っています。

KKUSの組合員のほとんどは読み書きができず、生活水準がとても低いため、同じ地域の他の農家同様、BPL(貧困ラインを下回る生活)だと正式に分類されています。地域にはきちんとした医療施設や教育施設といった基本的なインフラ設備が整っておらず、子どもたちは中等教育を受けるために長い距離を歩かなければなりません。また、衛生状態が悪く、清潔な飲み水が不足しています。特に夏の間は、気温が48度にまで達することがあり、家畜が大変な被害を受けます。

農民たちは翌年の作物の種を買うため、毎年資金を借りなければなりません。彼らはひと月に10~15%もの利子を請求する貸し金業者に、完全に依存しています。そして、収穫時期には中間業者に作物を安い値段で売るより仕方がないのです。そして、この流れが繰り返されていきます。

生産高と売上高

収穫期(3~11月) コットン総生産量 フェアトレード売上高 コットン在庫量
2008~2009年

375トン

375トン

 

2009~2010年

464トン

464トン

 

2010~2011年

567トン

66トン

510トン

農家にとってコットンは主な換金作物ですが、他にも大豆、小麦、とうもろこしや豆類、そして野菜を育て、家畜も飼っています。団体で合わせて775ヘクタールの土地を所有し、461ヘクタールを使って綿花を栽培しています。個々の農家の土地は1,2ヘクタールと小規模ですが、収穫時期以外は家族労働に頼っています。収穫時期には、各村がお互い助け合い収穫します。実綿はエコ・ネクターが購入し、村の集配所から運搬され、綿繰り機で種と綿(わた)に分けられます。綿は圧縮され、梱包されます。

フェアトレード

FLOフェアトレードでは、生産コストを継続して賄っていくための最低価格と、それに加えビジネスや社会事業に投資するためのプレミアムが生産者に支払われます。さらに、生産者は契約価格の60%までの前融資を要求することができます。

フェアトレード原綿最低価格 0.38ユーロ/kg(有機栽培)、0.46ユーロ/kg(通常栽培)
フェアトレード・プレミアム 0.05ユーロ/kg
KKUSは、新しい市場への参入機会やフェアトレード・プレミアムによる恩恵が動機となり、2009年3月にフェアトレード認証を受けました。生産物すべてをエコ・ネクターに売ることで、組合員たちは安定した価格で速やかに支払いを受けています。以前は、農民たちはコットンを牛の引く荷車に乗せ、15kmも離れた市場へと運ばなければならず、支払いは4週間から8週間も待つ必要がありました。

フェアトレード・プレミアムの使途

選出された生産者幹部組織(PEB)は、2ヶ月ごとに村の集会所で集まり、フェアトレード・プレミアムの使途を決めます。組合はこれまで地域の発展計画の資金として使うことに重点を置いてきました。

26の部落に飲料水を保管する密閉タンクが設置され、およそ5,000人の人々の役に立っています。以前は飲み水を得るために、村人たちは池や井戸、手押しポンプから2~10kmの距離を行き来していました。どの水場も、夏の間に水が枯れてしまうからです。さらに、水場には蓋がないので、動物によって汚染されやすく、不衛生でした。

その後、近隣の農家に給水できるよう接続された貯水槽が6つ、レンガで作られました。特に夏の暑い時期など、村人や家畜にきれいな水が緊急に必要になったときでも対処できるようになっています。

地域では宗教的な祭りがたくさん行われ、皆で食べる料理を提供し、温かいもてなしをするのが地域の伝統となっています。これまでは、隣村から料理鍋や台所用品、結婚式の招待客用の布団を借りたり、運んだりするのに、かなりのお金がかかっていました。そこで、フェアトレード・プレミアムを使って、台所用品と食器類に加え、マットレスと枕を購入し、部落ごとに支給しました。それらは、フェアトレードに関わっていてもいなくても、村人全員がわずかなお金で借りることができます。

一次医療施設のある村はわずかで、きちんとした医療器具を持ち、医者が常駐している施設はありません。一番近い病院は50kmも離れており、健康管理が重要な問題となっています。そこで、農民たちはフェアトレード・プレミアムを使って、最初の願いでもあったきちんとした医療キャンプを作りました。キャンプでは健康診断が無料で受けられ、当初は薬を200人分提供しています。

環境の改善と森林保護の推進を目的に、これまで約5,000本の苗木が地域住民に無料で配布され、植樹を奨励しています。

フェアトレード基準やフェアトレードの概念を農民たちに伝えるための勉強会が定期的に行われています。

今後のフェアトレード・プレミアム計画

  • 井戸の注水(水位の低くなった井戸を再び水で満たすため、ドリルで細い掘削孔を開け、帯水層から水をポンプでくみ上げます)
  • きれいな飲み水を供給するための貯水槽の追加設置
  • 雨水を貯めておく、ため池作り
  • 学生のための奨学金制度と成人教育プログラム
  • 農民のための生命保険と医療保険制度
  • 小麦を挽くために女性たちが遠くまで行かなくてもすむように、共同の製粉機を6箇所に設置
  • ミシンセンター(女性に収入をもたらします)
  • ミミズ堆肥計画(農場での使用や、副収入のための市場販売用の有機肥料作り)
  • 現在行っている植樹活動

出典:The Fairtrade Foudation(UK) 2011年5月(翻訳:FLJ翻訳サポートチーム)

コートジボワール:カボキバ カカオ協同組合

Kavokiva Cocoa Co-operative, Côte d'Ivoire

はじめに

ダロア市のカボキバ農業協同組合は、1999年に600人の農民が集まって設立されました。組合のある地域は、コートジボワール南東部にある高ササンドラ州ダロア市です。国のカカオ豆の40%以上が、このダロアで生産されています。

カボキバはカカオ豆とコーヒー豆の生産・売買を後押しすることで、組合員たちの社会的・経済的立場を改善することを目指しています。組合員の育てた豆は、地元の商人よりも高い値段で組合が購入し、肥料や殺虫剤を購入するための農業資金、学費、医療費の融資も行っています。

国のカカオ・コーヒー部門には約800の協同組合がありますが、中でもカボキバは最優秀組合のひとつとして政府から高く評価されています。管理体制や組合員への支援・サービスだけでなく、カカオ豆の量・質においても優れているからです。

政治的背景

独立後、比較的繁栄し安定した時期が40年間続いた後、政府の腐敗に経済政策の失敗、そしてずさんな統治体制がきっかけとなり、1999年に無血軍事クーデターが起こりました。それは、その後10年間におよぶ政治危機へとつながります。その間、2002年~2003年には内戦が起こりました。保健や福祉といった基本的な社会・経済基盤は、以前は地域の標準を優に上回っていましたが、次第に崩壊していき、それとともに1985年には10%だった貧困レベルは、2008年になると50%近くまで上りました。

ローラン・バグボは、国を分裂させたとして論争の的となった2000年の選挙で、大統領であると宣言されました。しかし、反乱軍による2002年のクーデター未遂がきっかけとなり、北部の人口の大多数を占めるイスラム教徒の権利を守ろうと、国の北半分を占拠した勢力との暴動が起こります。当時イスラム教徒は、政府を支配しているキリスト教徒やアニミスト(精霊信仰者)である南の部族からの差別と嫌がらせを訴えていました。

2003年1月、バグボ大統領と反乱軍指導者は”統一政府”を作りました。しかし、国に安定をもたらすことはできず、国は新軍(New Forces / FN)の支配する北と政府側の南とに二分されたままとなりました。2005年に行われる予定だった選挙は何度も延期され、2009年11月29日に予定されていた選挙について、政府は有権者登録に関する専門的な法的要求事項を保管する間、「ほんのわずかな遅れ」が生じると発表しています。選挙日程は変更され、2010年に行われました。

カボキバ協同組合の体制と生産

カボキバには3,400人もの農民が加わっており、そのうち216名は女性です。他にも加入希望者が2,000人もいます。組合員は地域別に45のグループに分けられ、地域全体では135の小グループで構成されています。

カカオはグループ、または小グループ単位で集められ、10ある倉庫のひとつへと運ばれます。倉庫はそれぞれ20トン入るようになっています。その後、3.5トントラックの一団によって、GonatéとZoukougbeuにある2つの中央倉庫のどちらかへ輸送されます。どちらの倉庫も、それぞれ1,000トン貯蔵できるようになっています。そこではカカオ豆の質の評価を行い、トレーサビリティ(生産履歴管理)ができるように、生産者別にコード番号が割り当てられます。それから、カカオ豆はサン・ペドロとアビジャンの港へと運ばれ、輸出されます。

カボキバ協同組合の製造部では、カカオ豆の手動選別や加工、倉庫保管・輸送・管理部門において、50名の作業員(常勤20名、臨時30名)が働いています。輸出部には、本部長1名のほかに10名の常勤作業員がいます。

カボキバの組合員全体でカカオ豆約12,000トンの生産能力がありますが、生産された豆の大半は協同組合よりもむしろ地元の商人へと売られます。カボキバは、ほかの協同組合と同じく、流動性資産つまり運営資金の不足に悩んでいます。カカオ豆を届けに来た農家に支払うためのお金を、銀行からいつでも借りられるとは限らないのです。買い手から支払いがあるまで、農家への支払いを先延ばしにしなければなりません。

このことは、9月の収穫時期の初めに特に問題になります。この時期、農家はどうしても現金が必要で、すぐに支払いをしてくれる地元の商人に、安い値段で売らざるを得ないことがあります。商人は多国籍輸出商社から資金を受けています。農家からの直接買い付けを禁止されている多国籍企業が、地元の商人たちに金を出しているのです。栽培者が「早く売らなければ」と焦ることで、豆が発酵・乾燥不足の状態で売られ、豆の質の低下をもたらしています。

社会的状況

ダロア地域は、農業を主とする農村や部落から成ります。カカオ農地の平均は3ヘクタールです。農家のほとんどは、カカオが主な現金収入のもとですが、ロブスタ種のコーヒーも栽培している農家も多くあります。国内消費用に果物と野菜も栽培され、女性たちは毎週金曜日に開かれる地元の市で、バナナや農作物を売っています。

政府は十分なインフラ整備を行うことができず、舗装されていない悪路が特に問題となっています。多くの村には電気が通っておらず、飲み水は村の井戸から汲むしかありません。健康管理の機会も不十分で、一番近い診療所や病院が10km離れているところもあります。農村で読み書きができない人の割合は、95%にも上り、設備の整っていない学校もたくさんあります。学校は遠すぎて、子どもたちは毎日通うことができません。

カボキバとフェアトレード

カボキバのカカオ豆は、2004年にフェアトレード認証を受けました。同じくロブスタ種のコーヒー豆も2005年に認証を受けていますが、それまではコートジボワール産のコーヒー豆はヨーロッパでの需要がなく、北アフリカへ売られていたため、フェアトレード市場に売られることはありませんでした。

カボキバはフェアトレード基準の下、カカオ豆1トンあたり1,600ドルの最低価格を受け取ります。市場価格が高ければ、そちらに合わせます。市場価格は、2001年に1トンあたり約750ドルまで暴落しましたが、その後は需要超過を懸念し、ここ数年は3,500ドルを超える高値をつけています。生産者たちは、追加で1トンにつき150ドルのフェアトレード・プレミアムを受け取り、地域や事業、環境改善のため蓄えています。

カボキバ協同組合長フェルジャンス・エングサン氏はこう語っています。「ここでの生活は厳しいが、村人たちは耐えているんだ。だから、消費者にはできる範囲内で最善の価格を支払ってもらわなくては。エングサン氏の同僚であり、カボキバの書記長でもあるジョージ・クワメ氏は付け加えました。「私たちは何年も忙しく働いて、消費者のチョコレートのために質の良いカカオ豆を作ってきました。だから、私たちが消費者に最高品質のカカオを届けようと最善を尽くしているのなら、消費者側にも最善の価格を支払ってもらわなければならないのです。」

フェアトレード・プレミアムの使途

無能な政府を前にして、組合員たちは、最低限社会的に必要なものを提供してくれるカボキバを頼りにしています。ただ、いくら売り上げが大きいといっても、カボキバも必要なサービスすべてに資金を都合できるわけではありません。しかし、フェアトレードのおかげで、カボキバは緊急に必要とされるサービスを整備することができました。診療所の建設や学校教育の改善は、カボキバ組合員だけでなく、地域全体にもプラスになっています。

フェアトレード・プレミアムによって、カボキバは組合員に役立つ重要な支援を行うことができます。それには賞与が含まれており、また、教育や医療などの設備を改善するための投資も含まれています。

健康管理

安全な水と健康管理が最優先です。農民が病気になれば、農園で働くことができません。そこで、モーターポンプのついた新しい井戸が3つ作られました。

組合の最大の功績のひとつは、フェアトレード・プレミアムを使って、ゴナテの医療センターを建設したことです。わざわざ公立の病院まで行かなくても、医師と助産師各1名、看護士が2名が、患者にさまざまな治療や手当てをほどこしてくれます。また、必要に応じて村々へ患者を迎えに行くための救急車も1台購入しました。どの組合員も無理せず薬が買えるようにと、これらは無料の健康保険制度で補われています。

カボキバ協同組合長フェルジャンス・エングサン氏が言います。

「医療センターや健康保険制度は、最も大切な支援です。死亡率も下がってきています。以前は年間30名の農民が亡くなっていましたが、今年は4名に減りました。このように改善したのは健康保険のおかげです。手術が36回行われましたが、その数だけ農民が死なずにすんだということです。少なくとも20名は、手術を受けなければ亡くなっていたでしょう。保険に入っていなければ、他に農民たちにできることはほとんどないのです。例えば、もしヘルニアになれば、死ぬのを待つだけなのです。」

カボキバ組合員のクアクウ氏がこう加えます。「フェアトレードと医療センターがなかったら、今日僕はここにいないだろう。事故にあったときや病気になったとき、医療センターが僕を救ってくれたのです。

教育

カボキバは、学校に通うための授業料が払えるようにと、組合員の子どもたちに奨学金を与えています。フェアトレード・プレミアムは、いくつかの村の学校の建設にも役立っています。そういった村では、政府の学校まであまりに遠く、また授業料も組合が経営する学校の2倍でした。親が子どものために支払うお金の一部は、教師の給料に使われています。

組合はフェアトレード・プレミアムのお金を使って、学校にごく簡易な教室と黒板などの備品を提供することができました。教育はとても大切だとされており、学校教育が受けられないところでは、竹を材料に仮教室を作り、自分たちで子どもたちに教える組合員たちもいます。また、カボキバは、人里離れたところにある学校にも備品を購入しました。

生産

資格を持った農学者を雇い、農業技術を進歩させ、生産力を高めています。

女性向けのプログラム

女性に読み書きを教える講座が設けられています。

移動手段

農民たちには自転車が配られ、農園へ通いやすくなりました。

環境

組合は、地域教育や省電力技術を通して、環境保護を推し進めようとしています。それは、有機栽培転換プログラムのひとつでもあります。

金融制度

組合は、組合員のための貯蓄預金制度を作ろうと計画しています。

コートジボワールのカカオ

年平均134万トンのカカオ豆を生産し、世界の生産量の約40%を占めているコートジボワールは、世界最大のカカオ生産国です。

カカオは経済の柱であり、GDPの15%、輸出収入の35%(2008年で14億ドル)を占め、政府の税収入の20%に貢献しています。およそ100万人のカカオ農家が、それぞれ3ヘクタールの畑で平均1,300kgのカカオをしています。カカオは、人口2,100万人の4分の1に近い、約600万人の人々の生活を支えているのです。

コートジボワールの収穫高は、カカオの世界価格に大きな影響を及ぼします。2002年10月には、内戦中にカカオの生産と輸出が途絶えるという懸念から、ニューヨーク市場での価格は16年ぶりの高値になる1トンあたり2.335ドルまで上がりました。2009年から2010年にかけての収穫高は、約120万トンと、過去5年間で最悪だった前年と同じかやや少なくなる見通しでした。これにより、世界的にカカオの供給不足になるとの懸念から、2009年10月には、カカオの価格は30年ぶりの高値となる1トンあたり3,411ドルを記録しました。高値をつけた要因としては、他にカカオ粉の世界的不足や、ドル安、農産物への関心が再び高まったことが挙げられます。

2002~03年の内戦後に政治不安が続く間、コートジボワールのカカオ部門は、深刻な投資不足に悩まされてきました。今のところ2010年には行われる見込みの選挙で、政治的行き詰まりに決着をつけ、長い間約束されてきた長期改革の道を開く可能性があります。

自由化と再規制

世界銀行とIMFからの強い要請を受け、1999年コートジボワールはカカオ部門の自由化を行いました。これにより、保証価格制度は終わりを告げ、部門を統制していた州立の安定化公庫が崩壊しました。そして、代わりに生産を促進・規制する4つの特別行政庁を置きました。カカオへの政府の直接介入とカカオ貿易への財政支援がなくなり、これらの機関はカカオ税から資金を得ています。しかし、透明性に欠け、役割が重複しており、農家の所得を改善できないとして批判されています。

現行制度では政府は収穫時期に公式価格を発表しますが、それは単なる目安であり、実際の価格は国内市場で決まります。農家は、ガーナでは価格の60%を受け取りますが、輸出では極端に高い税金と相まって、価格の40%以下の額しかもらえません。このことは「賃金が低い」と、農民の間に不満が広がる原因となっています。

自由化してからは、産業は汚職疑惑の問題を抱えています。本来カカオ部門に再投資されなければならない重税が紛失し、その調査から、2008年6月カカオ部門上級調査官が汚職と横領の罪で逮捕されるという前代未聞の事件になりました。2008年9月、カカオ部門により透明性をもたらす幅広い改革の実行に先立ち、カカオ部門を管理していた機関は、臨時組織に取って代わられました。最近の報告(2009年10月23日付ロイター通信記事)では、政府はこれまで国の主な歳入発生源を危険にさらしてきた生産高の減少を元に戻そうと、カカオ部門を再調整する構えだとしています。カカオ部門を国家管理に逆戻りさせることで、政府は生産者に最低価格を保証し、価格を安定させることができます。そして、生産者により大きく安定した収益の分配をもたらすことにより、減少しているカカオ生産の回復を促すことができるでしょう。

児童労働

世界中の農村で見られるように、コートジボワールの農村社会では、子どもが家族の畑の手伝いをすることが日常になっています。子どもの健康や個人の成長に影響を及ぼしたり、学校教育を妨げたりしない限り、この活動は児童労働とはみなされません。しかしまた、都会での露店商や洗車係り、レストラン業務や建築現場仕事など公式に記録されない経済部門と同様、コートジボワールでも子どもたちはカカオやコーヒー、その他の農業プランテーションで、未成年であったり、危険な仕事をさせられたりと、違法に雇われることがよくあります。その中には、コートジボワールの子どもたちはもちろんのこと、隣国ブルキナファソからの出稼ぎ児童や、マリやベニン、トーゴなどの国から人身売買されて来た子どもたちも含まれています。

政府は、カカオが最悪の形態での児童労働や強制労働をせずに、責任を持って栽培されているかどうか確認するためのプログラムに多く関わっています。その中には、世界カカオ財団との農園認証プロジェクトも含まれています。国際カカオイニシアティブ(ICI)は、近年設立された数あるカカオ産業行動計画のひとつであり、カカオ生産における児童労働と強制労働の撤廃を目標としています。ICIは2002年に設立された、NGO団体、労働組合、製造加工業者、大手チョコレートブランドとの間のパートナーシップです。ICIは、コートジボワールやほかの生産国でのカカオの生産において、労働基準をしっかりとした信頼できるものにしようと取り組んでいます。

http://www.cocoainitiative.org/

フェアトレードの認証を受けた生産者は、児童労働の禁止や基準違反の是正手続きを含む基準を満たさなければなりません。カボキバはフェアトレードの認証を受けるよりも先に、組合員のために児童労働憲章を制定しています。憲章では、子どもが空いた時間に家族の農園を手伝うことと、搾取的で違法な行為の違いをはっきりさせています。そして、児童労働を見つけた場合にどのような行動をとるべきかというガイドラインも含まれています。この憲章を実行に移し、組合員に憲章についての教育をするために、各地域に21の委員会が置かれています。

児童労働が起こる主な原因には、貧困が挙げられます。農家の多くは、カカオからの収入で辛うじて教育費用を支払い、子どもを学校に行かせるくらいしか稼げません。子どもたちの学校が始まる9月に学費が払えるかどうかで、状況は悪化してきます。この時期というのは、10月に収穫を控えた農家にとって、ほとんどお金がないという特にひどい時期なのです。この状況を打開するため、カボキバは組合員ひとりひとりに子どもの学費を援助するための資金を貸し付けています。その結果、ほとんど全員の組合員の子どもたちが学校へと通っているのです。

出典:The Fairtrade Foudation(UK) 2009年12月(翻訳:FLJ翻訳サポートチーム)

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