持続可能な開発目標 ‐SDGs‐
持続可能な開発目標(以下SDGs)は、あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困を終わらせ、誰一人として取り残さないことを目指しています。この目標は、フェアトレードが掲げる使命の根幹をなすもので、フェアトレードの取り組みは、まさにこのSDGsが掲げる17の目標のすべてに関係しています。
2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、17の目標で構成された野心的な国際目標であり、2030年までに貧困をなくし、持続可能な世界の実現を目指しています。これは、ジェンダー平等から気候変動、教育、安全な飲料水の確保まで網羅する包括的な目標です。今、世界中で13億人もの小規模農家と労働者が、世界中で生きる人々のために日々食料を生産し、地球を守ろうと奮闘しています。SDGsはそのような小規模農家と労働者の生活を改善することができる、大きな機会となります。
SDGsの理念は大変素晴らしいものですが、目標の多くは、いまだ達成にほど遠い状況です。2015年の採択から進歩があったとはいえ、依然として世界では7億8,000万人以上の人々(世界人口の10%)が、いまだに1日1.90ドル未満の極度の貧困ライン以下で暮らし、1億6,000万人以上の子どもたちが児童労働に携わっています。さらに、気候変動によって、これまでの進展が打ち消され悪化することも懸念されています。SDGsはあくまで枠組みを提供するものにすぎず、政府だけでなく、企業や市民社会も、それらを確実に達成するための行動を取る必要があります。
フェアトレードの取り組み
SDGsとフェアトレードの活動には、多くの共通点があります。17の目標を構成する169のターゲットのうち、食と農業に関連していないものはほとんどありません。SDGsの遂行のためには、小規模農家や労働者が中心的な役割を担っています。
フェアトレードは17の目標全てに直接的または間接的に影響を及ぼしています。フェアトレードの指標をSDGsと一致させることで、フェアトレードの様々な活動を、不平等や社会・環境の公正に直接取り組んでいる世界的な取り組みと連携させていくことができます。ここではいくつかの目標についてご紹介します。
目標1: 貧困をなくそう
“地球上のあらゆる形の貧困をなくそう”
この目標は、フェアトレードのミッションの中心をなすものです。農家と労働者への適正な生活所得と生活賃金の実現に向けて、大きく前進させることを目指しています。
目標2:飢餓をゼロに
“飢えをなくし、だれもが栄養のある食料を十分に手に入れられるよう、地球の環境を守り続けながら農業を進めよう”
農作物を生産し、世界で暮らす大部分の人々に食料を供給し続けているのは、小規模農家の人びとです。この目標を達成するためには、小規模農家が強固な生計を構築することが重要です。農家と労働者が尊厳ある収入や賃金を得ることで、家族を養い、より良い生活を送ることができるようになります。
目標4:質の高い教育をみんなに
“だれもが公平に、良い教育を受けられるように、また一生に渡って学習できる機会を広めよう”
大人や若者がトレーニングやインフォーマル教育を平等に受けることができれば、すべての人が将来の可能性を高めていけるようになります。フェアトレードの農家と労働者の中には、フェアトレード・プレミアムによる資金の一部を子どもの教育に使うことを選択しているところも多くあります。また、アフリカ・アジア・中南米の3つのフェアトレード生産者ネットワークは、生産者のためのトレーニングと学習機会の創出のため、資金を投じて注力しています。
目標5:ジェンダー平等を実現しよう
“男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう”
国連食糧農業機関(FAO)は、男女間の不平等を克服することで、世界の飢餓人口を1億5千万人減らすことができると指摘しています。フェアトレードは、女性が生産者組合や職場に平等な機会で参加し、より良い賃金を得て、収入源を多様化することを支援します。公平性を追求することは、女性だけでなく若者の機会や参加を高めることにつながります。
目標8: 働きがいも経済成長も
“みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、だれもが人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ろう”
フェアトレードは、国際労働機関(ILO)や各国の法令に基づき、労働条件の改善を推進し、労働者の賃金改善に向けた交渉を支え、フェアトレードの農園や組織で働く労働者の生活賃金の実現に努めています。国際フェアトレード基準は児童労働・強制労働を禁じており、若者やそのコミュニティ、生産者団体、政府などと協力し、根本的な原因に自ら取り組めるようにすることを目指しています。
目標9: 産業と技術革新の基盤をつくろう
“災害に強いインフラを整え、新しい技術を開発し、みんなに役立つ安定した産業化を進めよう”
国際フェアトレード基準とフェアトレード・プレミアムなどの資源により、農家と労働者は自分たちのビジネスとコミュニティへの投資をコントロールできるようになります。また、生産者が十分な情報を得た上で、ビジネス上の意思決定を行い、取引先との関係を深めることができるよう、サプライチェーンが完全に追跡可能で、透明性の高いものになることを目指しています。
目標10: 人や国の不平等をなくそう
“世界中から不平等を減らそう”
フェアトレードは、すべての農家と労働者が、貿易取引でより大きな利益を得られるような貿易政策と行動を求めます。フェアトレード最低価格保証とフェアトレード・プレミアムはセーフティネットであり、生活所得と生活賃金実現のための戦略は、より多くの人々に人間らしい生活への道筋を提供するものです。包括的な取り組みと経済的介入は、男女平等の拡大、若者の機会拡大、差別撤廃につながります。
目標11: 住み続けられるまちづくりを
“だれもがずっと安全に暮らせて、災害にも強いまちをつくろう”
フェアトレード生産者組合は、地域社会の柱となっています。フェアトレード・プレミアムの資金を、インフラやサービスの改善、気候変動に対するレジリエンス(回復力)強化のために投資しています。
目標12: つくる責任つかう責任
“生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう”
フェアトレードは、世界で最も認知されているエシカルラベルです。キャンペーンやアドボカシー活動を通じて、世界中の何千ものコミュニティと何百万人もの市民とともに、より公正な貿易のためのキャンペーンを行っています。消費者、生産者、サポーターが協力し、公正な社会と環境を推進しています。
目標13: 気候変動に具体的な対策を
“気候変動から地球を守るために、今すぐ行動を起こそう”
小規模農家は、今すでに気候変動の影響を大きく受けています。フェアトレードは生産者団体や気候分野の専門家と協力し、気候変動の影響やストレスに対する農家のレジリエンスを高め、環境の持続可能性を守る方法を適用しています。
目標15: 陸の豊かさも守ろう
“陸の豊かさを守り、砂漠化を防いで、多様な生物が生きられるように大切に使おう”
国際フェアトレード基準で定められた条件や、気候変動に強い手法で生産することにより、保護区や森林への負担を減らし、生物多様性の損失を軽減することができます。
目標16: 平和と公正をすべての人に
“平和でだれもが受け入れられ、すべての人が法や制度で守られる社会をつくろう”
国際的なエシカルラベルの中で、小規模生産者・労働者が50%の意思決定権を持って運営しているのはフェアトレード・インターナショナルが唯一であり、生産国・消費国とが真に対等な立場で、基準や方針を策定しています。
目標17: パートナーシップで目標を達成しよう
“世界のすべての人がみんなで協力しあい、これらの目標を達成しよう”
開発途上国の小規模農家よりも企業を優遇するようなサプライチェーン上のパワーの不均衡は、SDGs達成に向けた障壁となる可能性があります。フェアトレードは、生産者団体、企業、労働組合、市民社会、政府、その他のマルチステークホルダー機関など、複数のパートナーと常に協働しています。フェアトレードはこれらの連携関係を活用し、インパクト創出に向けた新たな道筋を共同で作り出しています。