参加団体インタビュー

第01回 大日本印刷株式会社

フェアトレード商品の社内消費のパイオニアに聞く


今回は大日本印刷株式会社 コーポレートコミュニケーション本部 CSR推進室の福地 寿江さんと五十嵐 哲さんにお話をうかがいました。


福地 寿江さん
2児の母なので、途上国の貧困にあえぐ子ども達のニュースを聞くと胸が痛みます。以前行ったカンボジアで出会った子ども達の無垢な笑顔が忘れられず、先進国でも途上国でも子ども達の笑顔は守るべきものだと思います。健康で心豊かな子ども達が育つ社会になるよう、できる活動を進めていきたいと思っています。

五十嵐 哲さん
出版印刷事業の営業職を経て現職。DNPグループの社会貢献活動の推進や社員のボランティア活動の推進などに取り組んでいます。企業にも社会にも社員にも、共に喜ばれる活動が展開できればと考えています。趣味は「たまに行く旅行」。普段出会えないものに遭遇するのは楽しいですね。


現在、大日本印刷(以下、DNP)さんが行っているフェアトレードの活動はどのようなものですか?


福地氏(以下、福)東京の市谷と五反田の2つのビルの応接フロアで、来客用コーヒーを全てフェアトレードでお出ししています(ホット、アイスともに)。また、社員専用カフェでも、エスプレッソベースのものは全てフェアトレードのコーヒーを使用しています。こうしたことで、当社では年間10万杯相当のフェアトレードコーヒーを購入しています。加えて、2010年からは、5月のフェアトレードキャンペーン期間に、市谷の近隣の方も利用できる売店でフェアトレードの紅茶やスパイスを販売したり、全国約20箇所の社員食堂でフェアトレード製品を使ったケーキやデザートメニューなどを提供する取り組みを始めました。


フェアトレードを導入しようと思ったきっかけはなんですか?


2004年にCSR推進室が立ちあがった時、DNPらしい社会貢献活動を模索していました。ちょうどその時、CSR推進室の室長が休暇でアメリカを訪れ、カフェで初めてフェアトレードコーヒーを飲んだことがきっかけです。味も美味しいし、途上国の支援にもなるし、何より、社員が普段飲んでいるものを「変える」という身近なことで、継続的に途上国の人々の生活に貢献できるということで、応接フロアの来客用ホットコーヒーへの導入を図りました。

この「社員の通常の活動の中で継続的に貢献できる」という点は、寄付のようにややもすると単発で終わりがちな支援と異なり、フェアトレード活動の一番の魅力だと思います。


最近では、給茶機のコーヒーをフェアトレードに切り替えられたとか?


オフィス内に置かれた給茶機。ホット、ストロングホット、アイスの3種類を提供

応接室を使わない社員がフェアトレードに触れられる機会をつくれないだろうか?と考え、2011年6月に当社市谷C&Iビルのオフィスフロアに、フェアトレードコーヒーを提供する給茶機を導入しました。有料ですが都度豆を挽いて提供するため、とてもおいしいと社員にも好評です。設置しているフロアでの購入量も増え、毎月約300杯程度が出るようになっています。

また、これまで1フロアだけで実施していましたが、2012年1月より市谷地区の2つのビル5フロアで拡大展開しています。


フェアトレードコーヒーの導入を進めていく中での問題点、苦労はどのようなところでしたか?


取り引き業者探しやコストアップ、フェアトレード活動そのものの社内理解といった点です。2006年の応接フロアへの導入では、取扱業者探しで苦労しました。ただ、提供コストについては、担当するグループ会社や取引業者の協力もあり同コストでの提供を続けることができました。2011年の給茶機への導入時は、社員への販売価格を上げる必要が生じ、どれくらいの単価アップであれば利用する社員が納得し利用してもらえるのか、社内で何度も検討をして価格を決めました。また、社内での理解浸透といった点では、CSR委員会で委員を対象とした試飲会を行ったり、イントラや社内報、ポスターといった媒体で繰り返し情報発信をするように努めています。


現在でも、企業でフェアトレードコーヒーを導入するにはまだまだ課題が多いでしょうか?



五十嵐氏(以下、五)食品会社が製品に導入するのとは異なり、当社のように社員の活動に導入する場合は特に、想定数量が限られることにより、実現できる商品・サービス・対応業者がない、といったことがあります。また、実現できる商品・サービス・対応業者があっても、その情報を知る機会に恵まれないといったこともあります。例えば、当社の応接室への導入事例では、当初、ホットコーヒーとアイスコーヒーを同時に導入したかったのですが、上記の様な理由により、アイスコーヒーをフェアトレード製品製にできたのは、ホットコーヒー切り替え後の5年後でした。

導入にあたって必要となる基本的な情報が入手しやすくなれば、より普及するのではないかと思います。


やっていて良かったと思うのはどんな時ですか?


活動から4年経った時点で集計したコーヒーの消費量がグループ内で年間約10万杯相当になることが分った時や、社員食堂でのメニューが完売した時などに、社員の中でフェアトレード活動が理解され定着してきたと感じ、続けていて良かったと思います。

2011年5月のフェアトレードキャンペーンで社員向けの試飲会を行った際、社員から「すごくいい活動だと思うので続けてください。」「去年食堂でフェアトレードメニューを食べました。おいしかったです。」と声をかけられ、とても嬉しかったです。普段あまり聞くことがない社員の生の声を聞くことができ励みとなりました。(他方、「初めて知りました」という意見もまだ結構ありましたが…)


今後の展望をお聞かせください。


当社は直接フェアトレード関連製品を生産していないため、社員の日常の活動を基本とした取組み事例を増やし継続させることが、当社らしいフェアトレード活動への貢献だと考えています。フェアトレードコーヒーを提供する給茶機も、設置しているのがまだひとつのビルだけなので今後増やしていきたいですね。

また、フェアトレード活動が普及していくためには、健全な市場が必要だと思いますが、そのためには、生産者、サプライヤー、消費者(個人・企業)が意見をキャッチボールして改善しあうことが大切だと思います。一方的に使ってあげましょうというのでは、おそらくどこかで行き詰まると思います。

社内に対してより一層の認知向上を図りつつ、今後は社外に対しても他の企業とのコラボレーションや生産者との関わりなどを通じてフェアトレードの認知向上と市場形成にDNPとして貢献していきたいと考えています。


最後に他社のCSR担当の方々へ一言お願いします。


フェアトレード推進にはいろいろ課題があると思いますが、様々な立場の企業が協力することで、課題が解決することもあります。いろんな業種の企業が参加し、より新しい価値を一緒に産み出せることを期待しています。

当社の取り組みもまだまだ試行錯誤の段階で他社さんにアドバイスできるレベルではありませんが、自社のフェアトレードコーヒーの活動で分かったことは、企業は資産や多くの社員を持つため、「ちょっとした変更」でも継続していくと意外と大きな貢献ができる可能性を持つということです。当社の取り組みが、皆さんの活動のご参考になれば幸いです。


あとがき

福地さんと五十嵐さんはとても気さくで、一つ一つの質問に真摯に答えていただきました。

「やっていくうちに課題が出てきて、それを一つずつ消していくうちに前に進んでいた」。この言葉には企業のフェアトレード社内消費のパイオニアとしてのたくさんの苦労が隠れていました。今回は、お二人ともどうもありがとうございました。

インタビュアー FLJ 芦葉健太郎

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