参加団体インタビュー
第07回 Fairtrade Foundation – フェアトレード ファンデーション(イギリス)
日本がイギリスから学べること - Fairtrade Foundation の取り組み -
今回はフェアトレードがあらゆる場所で浸透している国、イギリスでフェアトレードの普及活動に取り組む組織:「フェアトレード・ファンデーション (Fairtrade Foundation)」 から来日したアダム・ガーデナー ( Adam Gardener) さんにお話をうかがいました。
※インタビュアー:
フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局
学生ボランティア:三村 拓海 (上智大学 国際教養学部 国際教養学科 3年)
― 最初に、イギリスでフェアトレードの推進組織が形成された経緯をお聞かせください。
ガーデナー氏(以下、敬称略) ヨーロッパではフェアトレード自体は発展途上国からの工芸品を公正な価格で取引するという形式で1970年代には既に存在していました。しかし、今とは比べ物にならないほど、知名度は低かったのです。
組織としてのフェアトレード・ファンデーションは20年ほど前(1992年)に複数の NGO 団体によって作られました。日本の団体(フェアトレード・ラベル・ジャパン、以下FLJ、
設立年:1993年)とだいたい同じ頃です。また、設立当時のイギリス国内では、フェアトレードというコンセプトを認知している人が非常に少なかったのです。
― そんな認知度の低かったフェアトレードがイギリスでどうして広まって、
今ではフェアトレード先進国になることができたのでしょうか?
ガーデナー:大きく二つの理由があります。まず一つ目に「フェアトレードタウン」が一役買ったと推測されます。フェアトレードタウンとは国際フェアトレード認証ラベル製品を積極的に購入するなど、フェアトレードをサポートする努力を表彰され、その称号を得た市、町や地域のことを指します。 2000年前後にフェアトレードタウンの資格を得るために積極的に動き出した市町村が現れたことが要因だと考えられます。
そして二つ目に、教会も普及の為に大きな役割を果たしたと推測しています。当時、教会はとても積極的に国際フェアトレード認証ラベル製品を売りました。また、コミュニティのメンバーが多く集まる場所である教会でフェアトレードの商品を売ることは組織がこれから知名度を上げていく上で重要なことでした。私の家族はキリスト教徒ですが、以前からフェアトレード認証のバナナなどの果物が教会で売られていて、帰りに買っていたことを今でも覚えています。ですから、私は小さい頃からフェアトレードを知っていました。余談ですが、実は幼少の頃の経験がきっかけで私はフェアトレードに興味を持つようになり、大学生の時にはフェアトレード・ファンデーションでインターンシップをしました。大学を卒業したあと、やはりフェアトレード・ファンデーションに就職することになり、今に至っています。
イギリスでは国際フェアトレード認証ラベル製品をスーパーなどでよく見かけます。
例えば、イギリスでは3つのスーパーチェーン店がフェアトレード認証のついたバナナだけを販売しています。また、コーヒーや砂糖は様々な食品に使われる原料なので、イギリス国内のフェアトレード認証製品の売り上げの多くを占めています。現在、イギリスでは約80%の人がフェアトレードを知っていて、そのうちの9割近くの人が国際フェアトレード認証ラベル製品は質や安全面で信頼しているという調査結果もあります。
― そうですか。フェアトレードタウンは日本でも熊本市が2011年に日本、そしてアジアで初のフェアトレードタウンになりました。フェアトレードタウンについて、もう少し詳しくお聞かせください。
ガーデナー:2000年にイギリスのランカシャーにあるガースタングという町がフェアトレードタウンを宣言して以来、イギリスにはこれまでに500以上のフェアトレードタウンができました。現在は23か国に合計1,000以上のフェアトレードタウンが存在します。フェアトレードタウンになるためには、達成しなければならないゴールが設定されています。
例えば、スーパーやカフェ、レストランなどで国際フェアトレード認証ラベル製品がすぐ手に入る
環境を整えることや、地域の自治体や市民が協力して普及イベントの企画、実行することです。
このフェアトレードタウンのステータスは2年に一度更新されるもので、自治体はそれを保つべく、努力しなければなりません。目標達成のために、地域の自治体、企業、住民が一体となって共通の達成感を味わうことができるばかりではなく、みんながフェアトレードを身近に感じることができます。以前は、フェアトレードは一般の人にとっては遠い存在でした。私たちの国でここまで知れ渡るようになったのは国際フェアトレード認証ラベル製品が人々の日常生活にとても近づくことができたからだと思います。まだ普及の余地のある日本でもアジア初のフェアトレードタウンである熊本市を起点として、「暮らしの中にフェアトレードが溶け込む」ということに重点を置けば、これからも徐々に、そして着実に広まっていくのではないでしょうか。
― ロンドンオリンピックではフェアトレード・ファンデーションが大きな貢献をしたとお聞きました。
ガーデナー:2012年に開催されたロンドンオリンピックは「フェアトレードオリンピック」とも言えるでしょう。世界最大規模のフェアトレード・シティであるロンドンで4年に一度、世界中から大人数の人々が集まるイベント;オリンピック。期間中に街や会場でフェアトレード認証製品を売り出す、
正に私たちにとっては絶好の機会でした。私たちがオリンピック開催中にフェアトレード認証製品の認知度を上げ、多くの製品を売ることができたという意味では、大成功だったと言えるでしょう。具体的な数値を言うと、開催中には、フェアトレード認証コーヒーが合計1,000万杯、フェアトレード認証バナナは合計700万本売れました。私たちも忙しくて大変でした(笑)
2020年には東京オリンピックが開催されることが決定しています。これが契機となって、私たちがイギリスで2年前に巡り合ったフェアトレードを知る絶好の機会が日本でも訪れようとしています。フェアトレード・ラベル・ジャパンのみなさんが大活躍してくれることをとても期待しています!
私たちイギリスのフェアトレード・ファンデーションのスタッフも心から応援していますよ。
― はい、頑張ります。今日はどうもありがとうございました。
☆ インタビューを終えて ☆
「雑談を交えながら、インタビューというより気軽な雰囲気で楽しい時間を過ごすことができました。
フェアトレードを人々にとって身近にすることに重点を置いて活動を続けてきたイギリスの例には、とても関心させられるばかりでした。6年後の東京オリンピックという好機に恵まれたいま、日本でフェアトレードがどれほど広まるのかとても楽しみです。 (三村 拓海)