参加団体インタビュー

第10回 香港公平貿易聯盟(Fair Trade Hong Kong Foundation)

香港でのフェアトレード普及への道のり


今回は、夏休み期間中にプライベートで香港へ旅行しました。そこで「香港公平貿易聯盟(Fair Trade Hong Kong Foundation, 以下、FTHK)」 の オフィスへ立ち寄り、事務局長 ダフネ・イプ(Daphne Ip Tsz Ying, 葉子盈)さんに、香港でのフェアトレード事情についてお話を伺いました。実はアジアでは、日本以外でもフェアトレード普及活動は活発に行われています。




※インタビュアー:
フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局
学生ボランティア:三村 拓海 (上智大学 国際教養学部 国際教養学科 3年)




- まずは、FTHKについてお聞かせください。


イプ氏(以下、敬称略): 初めて香港にフェアトレード製品がもたらされたのは2002年です。FTHKがまだ存在しなかった当時、この出来事はOxfamという世界の貧困削減を目指す国際的な民間支援団体の努力によって実現しました。 2005年にはWTO(世界貿易機関)第6回閣僚会議が香港で開催されました。更に、この会期中には世界中の農家代表の方が集結し、より公正な貿易を求める大規模なデモ活動が香港中心部の繁華街で行われ、世界の不公平な貿易の実態が香港社会で注目を集めました。

この頃までに、Oxfamが主導して香港にはフェアトレード製品を扱うカフェや小売店が約50店舗までに増えていました。こうして、フェアトレードは香港市民の間に着実に広まり、2008年にFTHKが設立され、2012年にはFairtrade International(国際フェアトレード・ラベル機構)の一員として、香港、マカオ、中国本土の製品に国際フェアトレード認証を与える他、監査する権限を持ち、本格的な普及活動が始まります。


-  フェアトレードが新しい香港では、どのような普及活動をされているのですか?


イプ:私たちは色々なアイデアを駆使して、より多くの人に知って貰うよう日々努力をしています。一つの例は、有名な香港の俳優や歌手を起用して宣伝活動を行うことです。これによって、若者などの層を中心に、フェアトレードをクールなものとして流行らせようということです。また、今年2014年はFIFAワールドカップが開催された年ですが、この世界規模の大イベントの開幕に合わせて、香港で国際フェアトレード認証のサッカーボールで、サッカーの試合を行うイベントを私たちFTHKが主催しました。この試合には、香港の有名なサッカー選手が実際にプレーし、多くの見物客を惹きつけました。その他にも、機会あるごとにお得意先に贈り物を送る習慣がある香港企業へCSRの一環として国際フェアトレード認証ラベル製品の贈り物を提案し、結果、多くの企業の採用につながりました。


-  学生など、若者には特に積極的に普及を進めているとお聞きしました。


イプ:学生に対しては普及活動として様々なことをしています。例えば、FTHKの職員が学校を訪問してフェアトレードについての講義を行ったり、発展途上国で製品を生産する上で地元農家が直面する困難について理解を深めるシミュレーションゲームを実施したりしています。
(シミュレーションゲームについて詳しくはこちらへ:
http://www.traidcraft.co.uk/Resources/Traidcraft/Documents/PDF/General/schools_game_orange_trading_game.pdf
そして、何よりも一番生徒を巻き込むのが「フェアトレード大使プログラム(Fair Trade Ambassador Programme)」です。これは、学校や地域でフェアトレード普及活動をしてきた有志の大学生を研修などを通して「フェアトレード大使」に任命するものです。こうした大学生の活動の一例として、香港の大学の一つである香港理工大学ではフェアトレードについて少しでも知って貰おうと、学生がブラインドテイスト(フェアトレード製品とそうでないものを相手に知らせないでそれぞれ食べ比べて貰うこと)を不特定多数の生徒を対象に校内で実施しました。こうした学校訪問活動やフェアトレード大使などに携わる香港の中学・高校・大学の数は130を超えます。この数の学校で行う諸々の普及活動には職員たった1人で対応しています(笑)。ですが、これらのお蔭で若い世代にフェアトレードが広がっていると言っても過言ではありません。


-  学生の間ではとても盛んなのですね。日本では、似たようなシミュレーションゲームを「貿易ゲーム」と呼び、私たちフェアトレード・ラベル・ジャパンが企業のCSR担当の方と協力して、その企業の社員の方々へ実施することがあります。フェアトレードの必要性を知り得る良い機会になっています。

イプ:ビジネスマンを対象にあのゲームを行うとは今まで全く想像したことがありませんでした!私たちFTHKは子どもを対象に学校で行っているのですが、いつも生徒たちが楽しさあまりに興奮したり、トラブルが起きたりして進行するのが大変です(笑)。



この後、イプさんに香港でフェアトレード商品の販売や推進をしている小売店や団体について紹介して頂きました。特に香港の中でも賑やかな場所である灣仔(ワンチャイ)という地区にHappy Veggiesという障がい者支援やフェアトレード推進に携わるソーシャルエンタープライズ・レストランに特に興味を持ったので、後日訪ねてみました。そこでマネージャーの一人であるジャッキー・チェン(Jacky Chen, 陳家文)さんにお話を伺うことができました。

このベジタリアンレストランでは、厨房で働いている従業員全てが聴覚に障がいがある方なのだそうです。彼らは他の人とは変わらない平均的な報酬を支払われています。そして、ここのお料理はとても美味しくて健康的(筆者も実際にここで食事をとりました)。筆者が頂いたのは、五穀米にジャガイモと人参のカレー、野菜炒め、煮物でした。どれもあっさりした味付けで、健康志向の方には特にお勧めできるものです。 このレストランの入り口付近にはフェアトレード販売コーナーがあり、チェンさんによると毎月約7000香港ドル(約9万円)の売り上げがあるそうです。
皆さんも香港を訪れたときは、ぜひ、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

FTHKウェブサイトURL:http://www.fairtradehk.org/?lang=en
Happy Veggies 公式ブログ:

― インタビューを終えて ―
香港という日本からそれ程遠くない場所で、こんなにも活発にフェアトレードの普及活動が行われていることを知り、新しい発見になりました。特に若者に焦点を当てた積極的な学校訪問や多くの学生が主体的に参加できる活動など、今回の訪問で、フェアトレード・ラベル・ジャパンとは違った視点を持つ香港事務局の事例は、大変参考になりました。イプさんとのインタビューは当初1時間の予定でしたが、お互いの新鮮な話題に2時間以上が経過しました。時間を割いてくださったイプさんや Happy Veggies のチェンさんにもお昼時の混み合う中を応対していただき、感謝したいと思います。

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