フェアトレード・レポート

中南米各国のコーヒー生産者インタビュー

SCAJ(アジア最大のスペシャルティーコーヒーイベント)



2017年9月20日から3日間、東京ビッグサイトにて開催されたSCAJ(アジア最大のスペシャルティーコーヒーイベント)。この日のためにフェアトレードに参加している中南米6カ国(ブラジル、グアテマラ、ニカラグア、ホンジュラス、コスタリカ、コロンビア)から、9の生産者組合の方々が来日しました。 生産者の立場から見る“フェアトレード”、消費者である私達が知らない苦労や挑戦について語ってくださいました。


Q.今回はSCAJのために来日されたわけですが、日本の市場にみなさんの国のコーヒーを広めたいと考えた理由や、輸出をするにあたり日本の市場に期待していることはありますか。


Merling:ニカラグアの95%の農家は小規模組合員です。そして欧米と比較しても、日本へのニカラグア産のコーヒーの輸出量は本当に少なく、そのため日本での認知度も低いままとなっています。この現状を“フェアトレード”や“ニカラグア”というキーワードから日本の消費者にも広く知ってもらえるようなセミナーや、様々な方との交流の機会が増えていくことを願います。
Ivania:よりよい社会の構築のためには、様々な国との関係を持ち、コネクションの輪を広げていくことが重要です。Merlingの言ったように、日本とニカラグアとの交流は欧米と比べると少ないため、これから更に関係を築き上げていきたいです。
Carlos:日本には是非フェアトレードの活動への評価をしていってもらいたいですね。日本は私達の製品を最良の状態で輸入する環境の整備が整っている国の一つだと思っていますから。小規模生産者の一員として、経済的な保証のあるフェアトレードが我々の生活や使用している設備、そして生産物の質の向上に繋がっているということをもっと認識してほしいと思います。より多くの日本企業と提携し、更に質の良いコーヒー豆を作りたいです。現在は影響力のある多くの米国企業とのコネクションがメインとなっていますが、これからは日本をはじめ、他国への進出もしていきたいです。


Q.Joaoさん、CLACのコーディネーターという客観的な立場から、フェアトレードの仕組みについてどうお考えですか。また、他の組織や会社の仕組みとの違いや魅力はどのような点だと思っていますか。

Joao:フェアトレードの取り組みは、国際貿易の適正化を通じて発展途上国の様々な問題を解決する事を目的としています。そしてフェアトレードは貿易という経済的側面のみに留まらず、生産者の生活も支えることができるなど普通のビジネス以上の社会的影響力があると考えます。これは社会に大きなインパクトを与える活動の一つであると信じています。
フェアトレードに参加することで、1.更なる人権の保護、2.環境の保全、3.経済保証からなる品質の向上に努めることができるのです。この3側面からの生活・品質向上のシステムが生産者達の自立・活動への意欲の向上に繋がっているため、社会的目的の為にもとても重要な仕組みだと思っています。環境保護や持続可能な製品を対象とした認証組織もありますが、フェアトレードは、国際貿易を通じての経済システムを全世界共通で機能させる事により可能になる生産者へのサポートや、定期的な目標設定や技術・生活の質の向上を続けていける環境作りだと思っています。


Q.将来に向けて、これから挑戦していきたいことはありますか。


Joao:たくさんあります。まず小規模生産者たちを育成し、組織の一員であるという自覚を持たせていかなければなりません。お互いが協力しあえるような仲になり、環境を整えることはとても大切なことですから。そしてより多くの消費者にフェアトレードの取り組みを知ってもらうことです。これは時間がかかることですが、今回日本に来て、SCAJの参加に加え高校訪問もできたことは、私たちの活動を理解してもらえる大きな進歩だったと感じられました。そして次に、市場と生産者組合との距離を縮めることです。とても難しい挑戦となりますが、やはり小さな農村で暮らしている農家には、国際市場の現状、国外での出来事はなかなか見えづらいのが現状です。彼等が自信を持って生産するコーヒーを買ってもらいたい、しかし、買ってもらうためにどのように好みに合うものを生産できるか、ここの相互理解が無いと価値観の差が広がり、生産におけるプロセスにも影響が出てきてしまいます。市場から求められているものを生産していかなければなりませんから、これを何とか改善していきたいです。
Merling:参加する農園や収穫量を増やし、私たちの活動に理解のある市場を更に見つけていくことです。そのためにも、これからどんどん組織を強化していかなければならないと思っています。私たちの組織は多くの小規模農家によって構成されており、殆どの場合同じような背景に育ってきた人たちが共に働く環境になっているのですが、これから規模を拡大していくには、これまでとは異なる文化的・社会的背景を持った人達を生産者ひとりひとりが受け入れていく必要があります。
まずは組織の一員として動く彼等が多様性に対応できるように環境を整えていきたいです。また、市場拡大のためには、ターゲットの好みを知っておくことが重要になります。組織で質の良いコーヒーを作ることができたとしても、それを気に入って購入してもらえなければいけないのです。私達は主に欧米、日本に輸出していますが、それぞれの国の市場の好みに合わせた形に変えていけるようにすることも課題となります。
Carlos:資金を確保し、コーヒー豆の品質を向上させるための投資をしていきたいです。そのための広報は、私達にとって大きな役割を果たしています。フェアトレードのシステムを理解してもらい、それによる効果や影響力を強めていくことも私達生産者のモチベーションに繋がります。生産者への教育は、これからも改善していくべきだと思っています。


Q.Carlosさんにお伺いします。品質の向上が課題となっているようですが、品質を良くしていくためにはどのような働きかけが大切だと思いますか。


Carlos:先程言ったように、我々が自信を持って生産しているコーヒーであっても、他国の好みにマッチしない場合があります。この問題を解決するためには、異なる品質を揃えることが大切です。となると、そのための設備も必要になっていきます。 投資にはハードとソフトの2種類があり、ハードというのは焙煎やテストを行うための機材で、これが旧式であればもちろん精度も下がってしまいます。そしてソフトというのは技術です。それぞれの面で改善していくためには、外部の力を借りることも大切です。技術指導者やアドバイザーがいることで、生産物の評価やこれからの目標を明確にできることもあり、様々な形で質の向上に取り組んでいます。


Q.今回は中南米6ヶ国の生産者組合の方々が同時に来日されたわけですが、このようなかたちで少人数で話ができるような機会は過去にありましたか。


Merling:CLAC(中南米のフェアトレード認証組合のネットワーク組織)では、フェアトレード製品全てを対象とした、国を跨いでの大きな会議が行われます。しかしそれに参加できるのはCLACの決まったメンバーのみで、年に2回しか行われませんし、開催される地域は中南米と限定されています。今回はその「狭い世界」から出て、それぞれ異なる事情を持った国から来た生産者と直接的に話ができたことで、根本的に違う見方を共有し、CLACでの会議では得られなかった新しい発見もありました。
Carlos:少人数で日本に来ることになり、そこにはオフィシャルな会議のように特定した議題はありませんでしたから、普段できないようなお互いの詳しい話をすることができました。そして実際に日本に来ることで日本市場の大きさを知ることができましたし、日本でのフェアトレードの取り組みや将来性にも大きな期待が持てると実感しました。


Q.最後に、日本の消費者に理解してほしいこと、伝えたいことはありますか。


Joao:フェアトレードと他の認証組織との仕組みや目的の違いを知ってほしいです。日本をはじめ、他国でも未だフェアトレードの意図や仕組みをしっかりと理解してもらえていないと感じることがよくあります。ただ、今回SCAJの一環として開催されたセミナーには多くの方に来て頂くことができ、少しずつでも興味関心を持つ人が増えてきていると実感できたためとても嬉しく思います。
Carlos:フェアトレード製品には、コーヒーの他にバナナやチョコレート、ココアなどもあります。まずは知ってもらうことから始め、私達生産者組合員の生活の向上、生産物の質の向上のためにも、商品の購入をしていってほしいです。フェアトレードの商品を選んで、購入してもらうことが、世界中の生産者の生活の向上や生産物の質の向上への一番のつながりなのです。


インタビューを終えて


まず、このように中南米からの生産者の方々と直接お話をさせていただける機会を頂けたことに、本当に感謝しています。実際にフェアトレードの仕組みがどのように反映しているのか、商品の購入がどのように貢献に繋がっているかということを生産者の視点から学ぶことができましたし、これからもまだ取り組んでいかなければならない課題が中南米各国にまだたくさんあるのだということも実感できました。 まずは、商品を選ぶことから。私たち消費者のちょっとした選択や行動が、世界を変える一つのきっかけになります。 インタビューに答えてくださったみなさん、本当にありがとうございました。(大川愛加里)


インタビューに答えてくださった生産者組合の4名


アジア最大のスペシャルティーコーヒーイベント

インタビュアー


大川愛加里 (学生インターン 立命館アジア太平洋大学3年)
取材日:2017年9月22日

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